●words from SAYOKO
●第一章 一瞬のドラマを創る
●第二章 日本を求めてパリへ
●第三章 三島由紀夫ラブ
●第四章 夢のあるファッションよ再び
●第五章 現世は夢、夜の夢こそ真
 
   
第五章 現世は夢、夜の夢こそ真

山口 ベルギーのデザイナーのウォルトが今王立アカデミーで教えているんだけれど、展覧会をやったのをご存じですか。纏足に首長族、ウェストを細くする人たち、タトゥとか、世界中の民族の中にある身体加工や、そういう発想に基づいたデザイナーの作品なども交えた展覧会を開いたんです。身体加工や整形についてはどう思われますか。オルランとかはお好き?
下村 オルランはいつもパリにいますよ。整形をしていくことがアートというというのはいいんだけれど、ずっとやられちゃうと困っちゃう。耽美的じゃないから。
でも文化的なものは……首長族にしても纏足にしても、その文化圏にいる人にとってはその姿がキレイなんですよね。
山口 皮膚の下にぷくっとシリコンを入れるのも、いったんキレイだと思ったらキレイなのかも知れない。美意識の違いだから。
下村

確かにその国独特の美意識やビューティってありますよね。他の文化にいるとわからないんだけれど、そこでは美しいと感じられているような。
今の日本で、そうした首長族に通じる男の人たちが信じているビューティって何か、と考えたときに、ぼくが"ホヨヨ女"と名付けたものがあるんです。
" ホヨヨ女"というのは、いつも上目使いで、自分の名前を呼んで、タドタドしく喋りながら「リカね、なんか食べたぁ〜い」って言う。……止めて!って思うんですけれど(笑)。こういう女性の姿を良しとするのは、たぶん日本だけじゃないかと思う。それが可愛いと思って、女の子もやっちゃう。ある種の纏足ですね。

山口 下村さんとお話をしていると、ほんとうにありとあらゆることをご存じだと感じるんですが、そうした勉強はどこでされたのですか。
下村

いや、もう小さい頃からですね。それに知識といっても、すごく偏ってはいます。ふだんの勉強ができなかったぶん、「現世は夢、夜の夢こそ真」ではないですけれど、夢の世界に入っていったんです。だから勉強している、という気持ちはないですね。

山口 子供の頃にたくさん映画もご観になったんでしょう。
下村 観ました。鈴木清順さん大好きですし……もう、ありすぎて困るんですけれど。パゾリーニも好きだし、フェリーニも、ヴィスコンティも、さっき言ったケネス・アンガーも好きだし、坂東玉三郎さんも。玉三郎さんの『天守物語』は扇子を使った戦いぶりとか、とても美しい。やはりちょっとどこか耽美的なものが好きですね。美に生きている、という感じでしょうか。
山口 なるほど、子供の頃からずっとなんですね。
下村 セルジュ・リュタンスがどうとか、小学校ぐらいからずっとそうでした。毎日、毎日、そういうことばかり考えていたんです。
山口 小学生の頃にセルジュ・リュタンスですか。でも周りの男の子たちの間で話題になるようなものに興味はなかったんですか。
下村

一応インフォメーションとしては取り入れる、という感じでした。だから学校の中では浮きましたね。でも、要領がよかったからいじめられることはありませんでしたけれど。学校自体、あまり好きではなかったし、正直、楽しいとも思わなかった。

山口 人形もお好きでいらっしゃいますが、それも子供のときからですか。
下村

小さい頃からアンティーク・ドールを集めていまして。今はもう収集はやめてしまいましたけれど。小夜子さんがパリ・コレクションにいらしたとき、人形博物館に一緒に行きましたね。すごく楽しかった。博物館で二人ではしゃぎすぎて「うるさい」って怒られちゃって。

山口 だって、人形が喋っているからそれに合わせて喋っていただけなんですよね。
下村 いや、人形はほんとうに喋っていましたよね。内藤ルネさんの人形博物館にも行ったことがあるんです。旅館を撮影する仕事で、温泉につかって身体から毒が抜けたぁ、とほんわかしていたら、近くに内藤ルネさんの人形博物館があって。行ったら倍ぐらいの毒をもらって疲れた、という(笑)。人形、すごく好きなんですよ。
山口 映画がお好きで、人形もお好きで、ずっと美に生きて。
下村

ずっと夢を見て生きていくんだろうな、と思うんです。これまでも夢の中に生きてきたように感じるんです。小さい頃にコンプレックスで悩んで、そのときにたぶん、観ていた映画の女優さんや俳優さん、セットの中に、ポンと入ってしまって、そのままずっと生きてきたな、という気はします。もう出られないからしょうがないな、と。

山口 夢の中で生きるというのがクリエイターなのかもしれませんね。現実は現実として生きながらも、どこか夢の中で生きなくてはいけない。だから籠もったりするでしょう。
下村 そうそう、籠もります。でもそれはネガティヴなことではなくて。恋愛も夢を見ているようなものですね。
今も夢の中にいるみたい。演技をしているんです、毎日。人生って演技ですよね。だって役割があって生まれてくるわけだから、自然か自然かという以前に、それを演じているわけだと思うんです。魂が現世にスライスされて、この肉体を持って生まれてきた、と。
だから自分が演ずべき役割を全部やっておこう、と思うんです。ムキムキもやって、モデルさんにもなって、小夜子さんにもなって(笑)。
構成:下田敦子 
   
 



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