●words from SAYOKO
●第一章 一瞬のドラマを創る
●第二章 日本を求めてパリへ
●第三章 三島由紀夫ラブ
●第四章 夢のあるファッションよ再び
●第五章 現世は夢、夜の夢こそ真
 
   
第一章 一瞬のドラマを創る

山口 カズさんとはいつもたいへん親しくさせていただいております。
下村 打ち合わせと称していつも3時間くらいは自分たちのこと話したりしてますからね(笑)。
山口 今や越野さんと下村さんのゴールデン・コンビとは、どの雑誌でもみなさんお仕事をしたいとおっしゃっていますけれど。そもそも写真を目指されたきっかけは何だったのですか。
下村

小夜子さんを撮りたいがために写真家になった、というのは本当の話なんです。

山口 ずっと冗談だと思っていました(笑)。
下村

セルジュ・リュタンスが撮った小夜子さんの美しさに衝撃をうけまして。まさか本当に会えるとは思わず。ヴォルガで開かれたパーティで初めてお目にかかったんですよね。追いかけ回してお話をして。

山口 ヴォルガの階段で三つ指つかれたのを憶えています(笑)。
下村 それでイギリスの雑誌『Eat』という食と文化の雑誌の撮影で始めて撮らせていただいたんですよね。次にまたパリで再会して……。
山口 という話はさておき(笑)。真面目な話、ファッション写真を始められたきっかけは何だったのですか。
下村 自分ではファッション・フォトグラフではなく、ポートレイトだと思っているんです。人がすごく好きだし、興味があるから。
写真に興味を持ち始めたのは大学生のときですね。もともと「映画監督になりたい」と映画の勉強をしていて16ミリや8ミリを撮っていたんです。その授業の一つに写真を学ぶものがあって、そこで写真の魅力にはまってしまいました。
写真というのは一瞬のドラマじゃないですか。モーメント・ドラマ。写真って難しいでしょう、止まっている分だけ誤魔化せないし。その奥深さに感銘を受けて、そこから写真を目指したんです。
山口 お仕事として成立していったのはどの辺からだったんですか。
下村

ぼくはアシスタントについたことがないんですよ。それが良くもあり悪くもあり。編集の方がいて、スポンサーの方がいて、というような商業撮影のシステムがまったくわらかず、独学でやってきたので。やっぱり鳴かず飛ばずの下積みは長かったです。ちょこちょこ仕事をして、作品撮りしては、ブックを持って売り込みに行ったり。おかげさまで今はたくさんお仕事させていただいていますけれど。

山口 作品撮りはされていたんですね。カズさん独特のスタイルというのは、どういうふうにして確立されていったんでしょうか。
下村

もともとの美意識や世界観については、そうなった、というより、子供の頃からずっと持ち続けていたものですね。
あとは技術が蓄積されていくわけで、技術というのはボキャブラリーのようなものだと思うんです。表現したい核をアウトプットする方法論や技量は、経験の中で少しずつ蓄積され、成長していきますよね。そうしたボキャブラリーが増えたところで、確立したのかな、と思います。

山口 技術を習得するのにどのくらい時間がかかりましたか。
下村 10年くらい……でしょうか。写真をプロとして始めて10年以上経ちますから。今でも日々精進です。
山口 写真撮影における技術というのは、具体的にはどういうことなんでしょう。
下村

たとえば小夜子さんの場合でしたら、小夜子さん自体が媒体じゃないですか。ダンスもそうだし、お洋服を見せることでも、小夜子さん自体がメディアである。
ぼくの場合は、表現するにあたって一個の機械を通すので、そこに隔たりがあるといけないんです。自分の思いが突き抜けないといけない、敏速に被写体をキャッチし対話ができないといけない。

山口 だから撮影のときもスピーディなんですね。
下村 あとね、綺麗な女性が好きなんだと思います。自分の中にある絶対的な女性像や男性像を外に見つけているようなところもありますね。


    
 



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