●words from SAYOKO
●第一章 ロックから尺八の世界へ
●第二章 虚無僧と禅宗と尺八と
●第三章 身体感覚が変わる「密息」
●第四章 超絶の身体コントロール
●第五章 尺八の深淵を探り世界へ
中村明一●Akikazu Nakamura
横浜国立大学応用化学科に進んだロック少年だったが、武満徹作曲の「November Steps」を聴き尺八の音に打たれ、横山勝也師の門を叩く。以来、多くの虚無僧尺八家に師事し、バークリー音楽院では作曲とジャズ理論を学び、幽玄なる音の世界をあらゆる角度から極め、世界を魅了してきた。虚無僧に伝わる尺八古典曲の採集・分析・演奏をライフワークとしながら、ロック、ジャズ、現代音楽などとのコラボレーションで、演奏家として作曲家として幅広く活躍。琴奏者の八木美知依、磯貝真紀とともにKokooを結成し、倍音に満ちた伝統的な奏法を用いながらいままでにない新しい音を生み出してもいる。自らあみだした息継ぎなしに演奏する循環呼吸を駆使するなど、呼吸法についての造詣も深い。日本古来の呼吸法である「密息」を理論・実践面で掘り起こした著書『「密息」で身体が変わる』(新潮社)は、日本人の身体文化を考える上でぜひ読みたい好著。最新CDに『虚無僧尺八の世界 東北の尺八 霊慕』。http://www.kokoo.com/

じつは中村さんとは「東京キッドブラザーズ」繋がりのご縁があります。ちょうど私がモデルとして活動し始めたのと同じ年に、初めて舞台のお仕事をしたのですが、それが東京キッドブラザーズの舞台でした。時代的にはその少し後の1981年に、こんどは中村さんが東京キッドブラザーズのNY公演に出演され、尺八という楽器の音の豊かさでNYの観衆を驚かせたその舞台は私も拝見しました。

以来、中村さんは、失われつつある虚無僧尺八の楽曲を拾い集め伝統を深く掘り下げると同時に、ジャズやロック、現代音楽とのコラボレートし新しい魅力を創出されるなど多彩なご活躍で、尺八の音がつむぎだす世界や日本的な静の文化を世界中に広めてこられました。

尺八を吹く中村さんのお姿はまるで剣を構えた武士のようです。武士道や禅的な世界観に通じる精神が宿っているように感じます。身体をコントロールし、精神を研ぎ澄まし、尺八の音の世界を極めていくーー自分の身体を媒介にして音の世界を突き詰めていくあり方は、まさに修行と言ってもいいくらいに厳しく美しいお姿に思えます。今回、お話を伺って、精神も肉体も含めて自分のあり方そのものが表現に直結する方の、自分自身を律する厳しさ、すばらしさが、改めてわかったような気がします。

たとえば「呼吸」。ふだん私たちが意識もせず行っている呼吸を、中村さんは非常に意識的にコントロールして音楽として表現していらっしゃいます。まったく息継ぎをせずに演奏する循環呼吸を極めたり、日本人が昔から行ってきた「密息」を理論・実践面含めて復刻されたり。そうして奏でられる音はまさに息吹。中村さんが奏でる尺八の響きには、自らの生命そのものが表現されているように感じます。

「ふだんは触れ得ない世界を常に探し求め、明らかにしたい」とお話の中でおっしゃっていましたが、中村さんの尺八の響きは、聴く私たち日本人自身にとっても、ふだんは見えない世界や、たくさんの大切なことに気づかせてくれるのではないかと思います。


    
 



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