|
じつは中村さんとは「東京キッドブラザーズ」繋がりのご縁があります。ちょうど私がモデルとして活動し始めたのと同じ年に、初めて舞台のお仕事をしたのですが、それが東京キッドブラザーズの舞台でした。時代的にはその少し後の1981年に、こんどは中村さんが東京キッドブラザーズのNY公演に出演され、尺八という楽器の音の豊かさでNYの観衆を驚かせたその舞台は私も拝見しました。
以来、中村さんは、失われつつある虚無僧尺八の楽曲を拾い集め伝統を深く掘り下げると同時に、ジャズやロック、現代音楽とのコラボレートし新しい魅力を創出されるなど多彩なご活躍で、尺八の音がつむぎだす世界や日本的な静の文化を世界中に広めてこられました。
尺八を吹く中村さんのお姿はまるで剣を構えた武士のようです。武士道や禅的な世界観に通じる精神が宿っているように感じます。身体をコントロールし、精神を研ぎ澄まし、尺八の音の世界を極めていくーー自分の身体を媒介にして音の世界を突き詰めていくあり方は、まさに修行と言ってもいいくらいに厳しく美しいお姿に思えます。今回、お話を伺って、精神も肉体も含めて自分のあり方そのものが表現に直結する方の、自分自身を律する厳しさ、すばらしさが、改めてわかったような気がします。
たとえば「呼吸」。ふだん私たちが意識もせず行っている呼吸を、中村さんは非常に意識的にコントロールして音楽として表現していらっしゃいます。まったく息継ぎをせずに演奏する循環呼吸を極めたり、日本人が昔から行ってきた「密息」を理論・実践面含めて復刻されたり。そうして奏でられる音はまさに息吹。中村さんが奏でる尺八の響きには、自らの生命そのものが表現されているように感じます。
「ふだんは触れ得ない世界を常に探し求め、明らかにしたい」とお話の中でおっしゃっていましたが、中村さんの尺八の響きは、聴く私たち日本人自身にとっても、ふだんは見えない世界や、たくさんの大切なことに気づかせてくれるのではないかと思います。
|