●words from SAYOKO
●第一章 プレスリーの点描を描く小学生
●第二章 パソコンと出会いデジタル・コラージュへ
●第三章 隙間、亀裂、ひび、塵の美しさ
●第四章 蓄音機でDJ
●第五章 デジタルとアナログの間
 
第三章 隙間、亀裂、ひび、塵の美しさ

山口 永戸さんの作品には亀裂や飛沫がよく登場しますけれど、あれは製作の中で自然に生まれてきたものなんでしょうか、それとももともとお好きで絵にされたんですか。
永戸 もともと細かいゴミや塵、錆のテクスチャーや、隙間を見るのが好きなんですよ。街中の壁を見ているだけで「うーんかっこいい」と絵画的欲求も満足してしまう。

だから始めは、たとえばいろんなパーツを集めて人型のロボットみたいなものを作ったり、具体的なものを合体させて具体的な形を作っていたんです。そのうち具体的な素材を使ってはいるけれど形はそんなに具体的ではなく、たまたまラウンドスケープに見えるとか、そういうものを作って行って……さらには素材自体もツブや線ばかり集めて合体させ、爆破や飛沫、亀裂を作りだしたんです。

山口 もともと隙間や錆、塵、そういものがお好きだったんですね。
永戸 子供の頃に遊んでいた木工所も、工場自体が古かったので錆びた鉄や、木の屑があったり。父親が持っていた古いジャズのレコード・ジャケットのかすれている部分など、そういう古い質感が周りにいっぱいあって。

そういうものを見て育ってきたんですが、そのときから「すごくいいなぁ」と思っていました。

山口 ゴミや埃、錆びといったふつうは見逃されたり、拒否されたりするものが、美のある表情として永戸さんの中に浸透している、ということですね。
永戸 亀裂やヒビは、自然のいろんなところに点在しているわけじゃないですか。そこから気になったものを拾ってきて合体させて、みんなに「これいいよ」「見て」と思いながら、作品にしている部分もありますね。愛撫じゃないけれど、それを自分でなぞりたいんです。
山口 なぞって愛撫したあとが滑らかだと気持ちがいい(笑)
永戸 もちろんわざと汚して作ることもあるけれど、基本的には滑らかにして、ここはいびつなものでザラザラしているんだけど、という感じですね。
山口 美に変換させて作品として仕上げていくときに、どういう過程があるんでしょうか。
永戸 塵やゴミ、ツブといった排除されてしまうものにも惹かれているんですが、それと平行して惹かれているのがグラフなんです。棒グラフや折れ線グラフといった、何かを計測した数値を線で辿ったり、棒にする、その形状にすごく惹かれていて。

この2つを意識して作品を作っていますね。無意識で捨てられているものや時の経過によってできた錆と、人間が計測した数値から何かを理解しようとして形にしたグラフ、この2つを自分の中では合体させているんです。だから無意識をグラフ化したり数値化すると、ああいう美術になるということか、と思っています。



    
 



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