●words from SAYOKO
●第一章 美術畑から一転、佐渡島で太鼓修行
●第二章 和太鼓のニジンスキー
●第三章 日本人の血肉から出た表現に世界は振り向く
●第四章 孤高のアーティスト、そして空海
●第五章 アメリカの子供たちと
林 英哲●Hayashi Eitetsu
1952年広島県生まれ。現代和太鼓奏者のパイオニアにして第一人者。グラフィック・デザイナーを目指していたが1971年に「佐渡國・鬼太鼓座」創設に参加。1982年に和太鼓ソリストとして独立して以来、和太鼓の伝統にはないテクニックと表現を創造し、ソロはもちろん、現代音楽、ジャズ、ロック、各国の民族音楽との共演や、舞踏、アート・パフォーマンスとのコラボレーションなど斬新な音楽的な試みを次々に行い、前例のない和太鼓ソリストとして内外から高い評価を得ている。98年からはマン・レイ、伊藤若冲、藤田嗣治などのアーティストをテーマにしたツアー・シリーズを毎年展開。この9月には空海をテーマにした『空海千響』を国立劇場開場40周年記念・日本の太鼓30回記念作品として公演した。

英哲さんの舞台を始めて拝見したのはNYで行われた『佐渡國 鬼太鼓座』のコンサートでのこと。たいへんにすばらしい作品で、日本人として誇りに思った舞台でした。その後、独立されて東京にいらした頃から長年にわたって何度も舞台で共演させていただきました。

もともとグラフィック・デザイナーを目指されていて、ドラムを叩くロック青年であったと伺っています。それがちょっとしたきっかけから鬼太鼓座に加わり、11年間、佐渡島でTVや新聞などのメディアの情報すら排除し、ひたすら太鼓と向き合うストイックな生活を送り、やがて独立されて自分の世界を極めてこられました。

英哲さんは未踏の道を切り開かれてきた方です。もともと和太鼓は舞台上でメインで叩かれる楽器ではなく、お祭りや踊りの伴奏としてある楽器でしたが、その和太鼓に英哲さんは現代的な息吹を吹き込み、ソロとして初めて確立したのです。それはバレエにおけるニジンスキーのような偉業であると思います。

以前「太鼓は体力が勝負だからいつまで叩けるかわからない」とおっしゃっていたことがありましたが、年を経るにつれてその音や叩き方はますます円熟味と凄みを増しているように思います。その孤高な魂は曇ることなく研ぎ澄まされて、そこから発する音が世界を熱狂させる。

ソロコンサートはもちろん、オーケストラやジャズ、数々のアーティストとの共演など次々に新しい試みを続け、心惹かれる芸術家をテーマにした舞台を作りあげ、その合間にアメリカの子供たちに太鼓を教え、常に留まることなく前進し続ける英哲さん。これからも新しいことに挑戦し続け、私たちを驚かせ、熱狂させる舞台を作り続けていかれるのを楽しみにしています。


    
 



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